シューズ選びの成功の秘訣は、たくさん試しばきをすることです。
シューズ選びは、薬局で薬を買うようなものと考えればよいでしょう。どういう症状で何の薬がほしいのかと同じように、スポーツ店で「何のためにどういうシューズを買いたいのか」を率直に店員に話すことです。それによって数多いシューズの中から選択の枠が決まってきます。
買いに行くのはできれば夕方にします。一日活動して足のアーチも下がり、むくんで長距離を走った足の状態に近くなるからです。また、それまでにはいていたシューズを持参して、それを見てもらい、走りや足の特徴を店員に理解してもらうのも有効です。
ランニングシューズには大きく分けてレース用、トレーニング用、そしてレースにもトレーニングにも使えるライトトレーニング用といえるシューズがあります。また、最近はベアフットシューズという足を鍛えるシューズもランナーの注目を集めています。ランニングシューズは軽ければ軽いほど楽に速く走れるだろうと思い込んでいる人もいますが、軽くなればなるほど機能も必要最小限になっていきます。自分の走力と目的に合ったシューズ選びが必要となります。
雑誌やロコミで「このシューズが良さそうだ」「機能がすごい」と聞いても、それが自分に合うかどうかは別です。また、ひとつのメーカーにこだわり過ぎず、いろいろ試しばきをしてみることをお勧めします。5足も10足も出してもらうのは「お店に悪いんじゃないか」という気持ちをこの際捨てて、納得いくまでシューズに足を入れてみるべきです。だいたい1万円かそれ以上の買い物になるでしょうから、ちょっと気になる部分があれば、何足も試してみましょう。いくつも試しばきをするのにいい顔をしないようなお店では買わなければいいのです。
さて、具体的に何を基準に選ぶか、いくつかのチェックポイントをあげましょう。
まず最初に大きさのチェックです。できれば両足、シューレース(ひも)を締めて、かかとをしっかり後ろに合わせます。その状態で足指が自由に動くかどうか、また足幅が合っているかどうかを確認します。指先が動かせれば小さすぎない証拠。よく、爪先に合わせて、かかとに指1本入るかどうか見ている人もいますが、シューズはかかとが命。かかとを基準に確認します(この時、レースや普段走る時にはくソックスで試しばきするのがベストです)。
以上のチェックで特に問題がなければ、次にかかと回り、すなわちアキレス腱やくるぶしに当たらないか、違和感がないかをチェックします。そして徐々に前足部に体重を移動していって、かかとがずれないか(ずれれば大きすぎ)、爪先や小指などに当たらないか、走る時の一連の足の敷きを再現しながらチェックします。ここまでで特に問題がなければ、あとは自分の走り方(ピッチ、ストライド走法などの特徴)、クッション性の好み、など感触、好みで選んでいけばいいでしょう。
シューズは車に例えればエンジンではなく、タイヤです。あまり神経質になり過ぎるのも問題です。その時によくても、本当のところ、長い距離を走ると具合が悪い、あるいはその逆などということも後から出てくることがあるからです。ですから、レースに使用するまでには最低でも2週間程度はいてみる、あるいは20km程度の距離走をやってみた方がいいでしょう。インソールも足型に合うように多少は変化して足に馴染んできます。
イラスト/げんゆうてん