フルマラソンで数多くの人が経験する後半のスピードダウン。これは疲労ももちろん影響していますが、エネルギーの不足、枯渇も大いに関係しています。42.195kmを走り切るために必要なエネルギーは、しっかりと食事からとっておかなければなりません。
では、何をいつ、どれくらいとったら効果的なのか? フルマラソンの場合を中心に考えてみましょう。
レースのスタートは早朝からだいたいは正午までの間です。ですから主なエネルギー源は朝食からとることになります。朝食では走り続ける燃料(グリコーゲンの材料)となる炭水化物(糖質)を多くとることがポイントです。ご飯やパン、めん類などは糖質主体の食品なので、これらが主に身体を動かすエネルギー源、車にたとえればガソリンとなります。
しかしこれらの食べ物が実際にエネルギーとして力を発揮できるようになるには消化、吸収する時間が必要になります。したがって、朝食はスタートの3時間くらい前までに終えておくのが望ましいでしょう。実際に一流選手は3時間前までには食事を終えますが、フルマラソンを4~5時間前後のタイムで走る市民ランナーであればスタートの2~3時間前までにメインの食事を終え、必要に応じてスタート60~30分前に補食として胃に負担にならないカステラやチョコレートなどを取ればよいでしょう。
マラソンで3時間を超えるランナーこそ食事や補食の質、量、摂取のタイミングが大切になってきます。なぜならそれより速いレベルの人はトレーニングで、その時間、そのスピード、その距離を走り切れる身体(エネルギーもそれに合わせて供給できる身体)ができているといえるからです。
また、完走が第1目的の人や5時間以上かかる人ならば、脂肪も大切です。体内の脂肪は重さあたりのエネルギー量が大きいのでこれを利用するのです。たとえば、炭水化物も脂肪も同時に取れるピザ。生地はパンでチーズには脂肪が含まれるのでゆっくりランナーにはお勧めです。ただし食べ過ぎるとのどが乾いたり、胃がもたれるので注意が必要です。
スタート直前にアメ玉などから糖分を取る人もいますが、糖分だけではインスリンの分泌を急に増やし、結果として血糖を減らしてしまうためあまり勧められないという説もあります。しかし、個人差があるので、自分に合っていると感じればそれでよいと思います。チョコレートには糖分とともに脂肪も含まれているので途中の補給にも適しています。エネルギーゼリー類も有効ですが、これらはみな、普段から試しておく必要があるでしょう。食べることは気分的要素もあるので、自分にはこれが適している、これを食べると元気が出る、というものを日ごろから探しておくのも一つの方法です。
一方、距離が短い10km程度のレースの場合ですが、特にエネルギー不足は起こらないでしょうから、普段通りの食事を心がけて臨めば問題ないでしょう。ただし、食べない方がよいとされるものがいくつかあります。ゴボウなど繊維質のものはガスがたまるので好ましくありません。また塩辛いもの、のどが乾くもの、普段食べ慣れないものは内臓の働きに変化をもたらすので避けた方が賢明です。
ウルトラマラソン前の食事はフルマラソンと同様に考えたらいいでしょう。ただし、走るスピードがゆっくりな分、胃に多少残るくらい食べても(直前まで、また量的にも)問題はないでしょう。