カーボローディングは、走るためのエネルギー源となるグリコーゲンを筋肉中に最大限に蓄積するための特別な食事法で、レース中のガス欠防止に有効とされています。その方法には、「古典的」な方法とそれをもとにアレンジされた「改良型」の方法の2種類あります。
古典的な方法はレース1週間前から始め、週の前半は低糖質食、後半からレース当日までを高糖質食とし、リバウンドを利用して通常の2倍ものグリコーゲンを体内に蓄積させるというものです。しかし、食事が極端過ぎて体調を崩しやすく、さらに、低糖質食の期間中2回行うオールアウト(疲労困憊運動)によって疲労が残りやすいため、この方法はあまり現実的ではありません。
一方、改良型の方法とは、オールアウトや低糖質食の期間がなく、ただ、「レース3日前から高糖質食をとる」という方法です。この方法ならリスクが少ない上、古典的な方法と同程度のグリコーゲンを体内に貯めることができるため、現在多くのランナーに採用されています。実際、4時間以上かかるランナーは、燃費があまりよくない上、長丁場になるため、カーボローディングはとても有効といえるでしょう。
具体的には、レース3日前から(日曜日がレースなら木曜日から)ごはんやパン、めん類ばかりの食事にします。もちろん、肉や魚、野菜のおかずは不要。わかりやすいイメージでは、ファミリーレストランにある「かやくごはん+うどんセット」。こんな食事がカーボローディングの典型的メニューといってよいでしょう。そのほか、おにぎり、スバゲティ、菓子パン、雑煮、安倍川餅、磯辺餅など好みのものを組み合わせましょう。
レース前日からは、生もの、消化の悪いもの、食べ慣れないものなどは控えてください。カーボローディングの仕上げはレース当日の朝食。餅入りのうどんやおにぎりなど、穀類主体で消化の良いものを食べるようにし、クエン酸を含んだ果物か果汁100%のオレンジジュースをプラスします。こうすることでクエン酸がグリコーゲン蓄積に効率よく働くからです。
レース中はエイドステーションごとに必ず給水しましょう。さらに、スタミナ切れを防止する効果的な方法として、5kmごとにブドウ糖のタブレットを5粒(5g)ずつ補給し、レース中2回のエネルギー補給をするとよいでしょう。補給ポイントは6分/kmで走っている場合、20km地点と30km地点。ただし、スタミナに自信があれば20km地点での補給は省略してもよいです。しかしながら、30km地点の補給は必須。遅くとも33kmまでに必ず1回エネルギー補給しましょう。これはマラソンレースの最大のヤマ場といわれる35~38kmで「足が動かなく」なるのを防ぐため。その地点でちょうどエネルギーになるよう、消化時間を加味してヤマ場にさしかかる30~40分前(5~7km手前)に補給ポイントを設けるわけです。なお、補給するものは、その即効性からアルミパックのエネルギーゼリーがおすすめ。1回の補給量は100kcal(1/2本)程度が適当でしょう。以上のことから、レースにはウエストポーチを着用し、アルミパックのエネルギーゼリー200kcal分(約1本)とブドウ糖のタブレット40粒(40g)を携帯することをおすすめします。
鈴木 いづみ(管理栄養士)