マラソンは体力を非常に消耗するスポーツです。フルマラソン42.195kmを完走するということは、精神的にも肉体的にも大変なエネルギーを必要とします。初心者なら5時間、ちょっと練習してきた人でもゴールするまで4時間ほど走り続けることになるからです。このため、このスポーツにはエネルギーの源である炭水化物がとても重要となります。
通常ランナーはマラソンを走り切るためのエネルギーを十分に体内に貯蔵したうえで、スタート地点に立ちます。走り始めは快調ですが、だんだん苦しくなり、やがて突然、失速したように足が動かなくなることがあります。その多くが、約35km地点で起こるので、これを一般に「35kmの壁」と言います。
走行中、突然ガクンとスピードが落ちて、思うように足が上がらず走れなくなるこの現象は、運動する際の最も重要なエネルギー源となる、肝臓と筋肉内に貯蔵されたグリコーゲンの枯渇が、主な原因となって生じると言われています。要するに「ガス欠」ですね。お腹がすいて走れなくなったのです。
グリコーゲンは、穀類や芋類、砂糖など炭水化物の摂取によって体内に蓄えられ、たんぱく質や脂肪と比べると素早くエネルギー源に転換される即効性のある物質です。通常、炭水化物は、一日に摂取する総カロリーの50~60%程度で十分ですが、レース3日前からは、ご飯、麺類、餅、パン、パスタなどの炭水化物を意識して多めにとって、グリコーゲンの貯蔵を行いましょう。これを「カーボローディング」と言います。こうしておくことによって「35kmの壁」は克服しやすくなります。
ただし、貯蔵可能な量は、個人の筋肉量や活性能力によってある程度決まっているため、レース前に大量に詰め込んでも、すべてが蓄えられるわけではありません。
レース当日の朝の食事は、消化も良く、体内に吸収されやすい雑炊や麺類を中心に食べるといいでしょう。また、オレンジ、グレープフルーツなど柑橘類系の100%果汁ジュースや、クエン酸を含む梅干しなどを同時に取ると、グリコーゲンの蓄積をいっそう促進してくれます。